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キミニ ネガウ Shinichi 9

「…何を言わせたいんだよ」

俺は服部の首筋に顔をうずめながら、抗議をした。

「何て、それはやな…」
「俺だって…」

お前が気付く前からずっと。
ずっと悩んで抱えてきた想いが。

「半端なわけがあるか」

声が自然と震えてしまう。

どうしたら。
コイツは、躊躇いを越えてくる?

背中の服を握りしめて、俺は抱きしめる服部を引き剥がした。
驚いた服部を真正面から見据えて、唇を噛む。

眼差しがかち合って。
真剣な。酔いそうなほどに強い眼が俺を見る。
そこに、見間違えようのない焔が、見え隠れしていた。

煽られたように。
膨れ上がった想いが奮える。
そんな目で見られることが、嬉しくてたまらない。

どれだけ俺は、のめり込んでいるのだろう。
また思い知らされる。

息が、苦しい。
雁字搦めにされて。
もがけばもがくほど絡まって。
逃げることなど到底できず、ただ溺れる。

「何を勘違いしたのか知らねーけど」
「工藤…?」

手を伸ばして、服部の胸倉を掴んだ。

「本気にしろよ」
「ホンマに、ええんやな?」
「何度言わせりゃ気が済むんだよ。いいって言ってんだろっ」

半ば唸るような声で俺は言葉を発した。
胸倉を掴んだ手に、ぎりっと力が入る。

去るなどと口にした服部。
もし本当に、同居の話を無しにしたら。
二人の関係は、どうなるか。
そんな事は、想像もしたくない。

すり抜けていく。
ようやく捉えたはずなのに。
今、目の前に服部はいるのに。
ものすごく、遠く感じて。

怒り。寂しさ。焦燥。
ごちゃまぜになって、訳が分からなくなる。
爆発しそうな感情に、握り締める手が痛い。

「ったく、どうしようもねぇな」

そのどうしようもなく堕ちた俺を、救えるのは。

「服部。お前は、俺が大事だって言ったよな」
「…言うたで」
「なら、俺をちゃんと見ろ」

ぐいっと胸倉を掴む手を引いた。
近づいた服部が咄嗟に顔を引く。

近づけたのに、開いた距離。
そこに、戸惑いが表れているように思えて。
苛立たしい。
しらず眉間に皺が寄る。

ただ、少し引き寄せただけで。
俺はこんなにも胸が詰まる思いがするのに。

お前が、俺の側にいない事。
それが、一番耐えられない。
俺の欲しいモノ。望むモノ。
すべてがドコに存在すると思っている。

熱い塊がこみ上げてくる。
服部を一方的に服部を睨んで、それを飲み込む。

覚悟なんて、とうの昔に決まってるんだ。
そうじゃなければ、誰がこんな真似をするか。
大事だと思ってくれるのは嬉しいけど。
好きだと言いながら、背を向けるのは、許せない。

「逃げるなよ、服部。お前らしくもない」
「何やて?」

鼻で笑うと、負けず嫌いな服部の眉が僅かに寄った。

どうせなら、とことん向き合おうじゃねぇか。
今まで、そうやってきただろ?

「俺も逃げない。だから……一人に、すんじゃねぇよ」

情けなさに嫌気がさす本心さえも、吐露する事で繋ぎ止められるなら。
口元に真逆の笑みを浮かべて利用する。

「まだくだらねー事抜かしやがるなら、ここまでだと思え」

握る手を離して、トンッと突き放すように服部の胸を押した。

「……分かった」

服部がゆっくりと瞑目する。
すうっと閉じた瞼を持ち上げた服部が、にっと笑うと口を開いた。

「どんな俺でも、ビビるんやないで」

眼前の瞳に宿る焔が、揺らめいた。
そしてこの身体には、未だ燻る火種が残っている。
簡単に消すことはかなわない。
それなら、方法は…?

「お前こそ」

吐息交じりに答えて、服部に圧し掛かる。
背中に回った腕に笑んで、俺は服部の唇をそっと塞いだ。











目が覚めると、辺りは薄闇だった。
ぼうっとしたまま、目に映る闇を見つめる。

思い出したように、俺は視線を動かして、辺りを見回した。
いるのは、どうやら自室で。
サイドボードのライトが灯っている。
そして、寝ているのはベッド。

身体が重く、異様に怠かった。
記憶はすぐには繋がらない。
何故と考えて、思考が固まった。


ゆっくりと、横を向いて。
寝息のとどくほど近くにいる服部に、ゆるりと笑みが上がる。

身動ぎをすると、身体を抱える腕に力がこもった。

…起きてる?

服部の寝顔を凝視するが、瞼が持ち上がる事はなかった。

んだよ。寝てんのに。

けれど、そのこもる力が嬉しくて。
満たされたと思ったのに、じわりと充足感が増した。

と、服部の瞼がふるえ、ふわりと瞼があがる。
二、三度瞬きをして、横にいる俺を捉えたのか、微笑みを刻んだ。

「工藤がおる」
「いるけど、何だよ。いちゃ悪かったか?」
「何でそうなるねん。工藤が側におるんが嬉しいんや」
「よく言うぜ。出ていこうとしたヤツが」
「確かにな。けどしゃーないやん。重荷になるんやないかて、思うたんや」
「重荷?」
「せや。同じモンが欲しいて、強請ってしまいそうでな」

今だってほら、と。
もう、埋める隙間などないのに、服部は俺を抱き寄せる。

逃すまいとするのか。
それとも、逃れられないようにするのか。
俺を縛り付けようとキツク抱く腕は、そのまま求める心の表れだと。
その腕を、自分のものだというように素直に胸に抱くと、服部はくすぐったそうに笑った

服部が顔を寄せて、首筋にキスを植付ける。
いくつもの印を刻まれたというのに、また。

「…お前って結構独占欲強いんだな」
「嫌なん?」
「…俺がいつ、嫌だなんて言ったよ」
「…せやな。言うてへんな」

言いながら服部は、今度は耳朶を食んだ。
襲った感覚に肩が震える。

「おい、いい加減にしろって」

服部を押しのけて、俺はゆっくりと起き上がった。
さすがに、もう一度なんてのはご免被りたい。
なのに、ちりっと、首筋の痕は熱を持つ。

「杞憂でよかったわ。なあ工藤」
「…」
「黙らんといて」
「うるせーよ」
「せやかて工藤が、あんなに惚れ込ん…」
「言うな。それ以上言いやがったら…」
「蹴られへんのとちゃう?」
「…誰のせいだ」

腰が、と撫でる手をはたいて、服部をぎっと睨みつける。

「そら工藤やろ? 強請るから止まらへんかってんもん」

にやりと、服部が笑った。
かっと一気に顔が熱くなる。
恥ずかしさに慌てた俺は、立てた膝に隠すように顔をうずめた。

「…お、照れとる照れとる」
「……わりーかよ」
「…ん?」
「わりーかっつってんだ! バカヤロウ!!」
「おわっキレおった!」

がばっと顔をあげた俺は枕を引っ掴むと、服部に殴りかかった。

頭の下で組んでいた手を慌てて解いた服部は、眼前に腕をかざしてガードする。
無視して、思いっきり振り下ろすと、あっさりと受け止められた。

「殴らせろ!」
「…かわええなぁ。工藤は」
「いっぺん死んでこい!」
「一人になってまうで?」

その言葉に、反射的に動きが止まった。
なぜか金縛りにでもあったように、動くことができなくて。
そんな自分が悔しくて、俺は唇を噛んだ。

力の抜けた手からすいっと枕を抜き取った服部が、抱えたまま起き上がる。

「すまん工藤。そないな顔せんといてや」

苦笑しつつ顔を覗きこんだ服部が、温かな掌で頬を包んだ。
そして、誓うように言葉を紡ぐ。

「絶対、離したりせえへんから、俺。せやから工藤も」

俺から、離れんといて。

音にはなっていなくても、そんな言葉が聞こえる。
それは、君に願う、ただ一つの事。

ふわりと縛めが解けた気がした。

「…絶対なんてあるかよ」
「そやな。せやけど、絶対ゆうたら、絶対や」
「…すっげー自信」

くっと笑い声を洩らすと、服部もにこりと笑う。

コイツが自信あり気に笑うだけで。
「絶対」をバカみたいに信じられる気がする。

…そう、なんだよな。
そうやっていつも、お前は俺に、前を見させてくれた。

頬に触れる手に自らの手を重ね合わせる。
好きだ、と心の中で囁いて。
服部を真っ直ぐに見つめると、俺はゆっくりと、微笑みながら静かに頷いた。






-END-




最後までお付き合いくださいまして、ありがとうございました<(_ _)>
お楽しみ頂けましたでしょうか?
感想等ございましたら、ぜひお聞かせ下さいませ。

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コメント

え・・・エチは・・・?(はい、殴って下さい・笑)
「どんな俺でも、ビビるんやないで」の平次にぞくっときたvv
喧嘩腰の勢いで突き進む二人がいやん、素敵v
なにはともあれ完結おめでとうございます♪
めでたいのになんか寂しいですが。
リレー2はオフ本になるんですよね。こちらも楽しみにしていますので頑張ってくださいね♪

投稿: しえる | 2008年10月 6日 (月) 17時51分

どうしようか迷って、エチは思いきりすっ飛ばしたのですがv
あらーやっぱりそうきましたかー(笑)
平ちゃんは攻めですからね。最後はキメて頂きましたv(笑)

キャラも書き手も執筆期間中大暴走かました(主に私が;;)「キミニネガウ」に最後までお付き合いありがとうございましたv
ようやくUPも終わって、恥ずかしさから解放ですv
とはいかないようで(笑)
だって2の方も、ストレートで恥ずかしいんだもん!(爆)
いずれUP&オフ発行予定ですので、今しばらくお待ち下さいませねv
コメントありがとうございましたv

投稿: 紫磨 | 2008年10月 6日 (月) 20時15分

長々とお付き合い有難うございました
てか、新ちゃんにやられっぱなしの平ちゃんでしたが……。
特に、私が書くとな……。どこが攻め?見たいな。
紫磨さん、さまさまでしたよ。
終わって寂しかったのは、書き手も同じですよ。
1がおわって、あー、なんか、おわっちゃった?
見たいな気がすっごいして。
そんなわけで2が始まっちゃったわけですが。
2もいずれUPされますんで、お待ちくださいv
コメント有難うございました

投稿: 綾部 | 2008年10月 7日 (火) 15時26分

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